矢野さんの庭づくりは、その土地の地形や水、大気の流れを理解することから始まります。そして、大きな生態システムの中でその庭という場所の本来の機能が発揮できるように整えていきます。
矢野さんにきっかけを与えられた空間は、繋がりが許された水や空気とコミュニケーションをとりながら、水脈や空気の流れの一部分となって、再び育ち始め、生命力を養っていきます。自然という美に頭を下げた、完成という概念が存在しない野というものがここに誕生しました。水と空気の日々の変化、季節の変化、さらにこの惑星のダイナミックな変化の中で、これからこの小さな空間がどのように生きようとし、変容していくのか、とても楽しみです。
人類がその土地の自然が発する声を無視し、人の頭の中で造形を作りあげてきた時代を終え、多様性を備えた持続可能な空間システムを創造していくことが求められています。この庭は、これからの時代に求められる空間や社会のデザインの在り様について問いかけ、訪れる人々の視座を高めてくれることでしょう。